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 欧州も米国も、日本の1990年代のような停滞に陥りつつある。成長につながる構造改革の条件が整っていないためだ。
 日本は、構造改革に必要な五つの要素が小泉政権下ではそろっていた。1成長戦略2構造改革に伴う(痛みを和らげる)利下げや中小企業支援などの安全網3銀行への条件付き資本注入(経営者が責任をとり、収益が十分上がるようにする)4国民の支持5銀行に対する厳格な資産査定、である。
 いまの米国は条件がそろっていない。とくに成長戦略が不十分だ。インフラ建設で成長を図るという議論がオバマ政権初期にはあったが、その後消えた。大統領が雇用中心に成長をめざすと言い出したが、米議会の同意が得られるかどうか。QE2や金融機関に対する資本注入、厳格な資産査定はやったが、景気が良くならないので大統領への国民の支持が下がっていることも、問題解決を難しくしている。
 欧州も成長戦略は進んでいない。そのうえ、金融機関に対する監督基準が均一でなく、資本注入にちゅうちょしている。改革に対する国民の支持は弱い。厳格な資産査定もできていない。
 こうした欧米の状況は日本の90年代もそうだったが、財政出動で一時的に景気がよくなっても、構造改革が進まないので、経済はまただめになる。
 構造改革とは、労働者1人当たりの生産性の伸びを高めるとともに、実質金利を下げることだ。
 たんに歳出削減で財政赤字つまり分子を減らすだけだと、その影響で分母の国民所得も減ってしまい、比率はむしろ上がりかねない。それを避ける最大のポイントは、分母である国民所得を増やすこと、つまり経済成長戦略なのだ。
 企業の生産性を高めるなかで、少しずつ歳出を削減して財政赤字を減らす。そうした方法が、財政危機を解決する一番賢いやり方なのだ。
 欧州ではまず金融機関の資産再評価や、資本注入、経営者の引責などが求められる。混乱を防ぐため欧州中央銀行が国債購入でサポートすることも必要だ。
 米国では、インフラ整備が有効だろう。
 一方、日本も小泉政権後は政策に欠陥が目立つ。速水優総裁や福井俊彦総裁時代の日本銀行は、物価上昇率がゼロ以上になるまで行動する方針を明確にしていたが、いまの日銀のやり方はそれに比べて不十分。このままではいけない。政府がインフレ目標を設定すべきである。



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