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 長期の停滞が続く日本経済を成長軌道に復帰させるには、企業と家計の自由な行動を妨げている規制の撤廃・緩和と、既得権益に守られた官制市場の民間への開放が欠かせない。
 規制改革は東日本大震災被災地の迅速な経済復興にも欠かせない。農林水産業の再生、医療の提供体制の立て直し、被災者への職のあっせんなどは、復興特区を設けて民間を参入しやすくする規制緩和が有効だ。
 内需産業は、グローバル競争にさらされている製造業に比べ生産性が低い。内需産業に民の創意工夫をもっと取り入れるためには、参入規制をゆるめる必要がある。教育や法務分野の社会規制も聖域視すべきではない。
 医療分野の改革は、「混合診療の禁止」の見通しが避けて通れない。混合診療を原則解禁すれば、患者が自費で全額負担するのは新薬の分だけで済む。治療の選択肢が広がり、医療分野の技術革新に寄与する。
 介護・保育分野は株式会社を含めた民の参入をもっと促すべきだ。有料老人ホームの総量規制のいっそうの緩和や、社会福祉法人の税制優遇の見直しが急務だ。
 TPPへの参加表明へ向け、海外からの看護師・介護士の受け入れ態勢充実や農協改革も待ったなしだ。
 教育分野は、民間から教員を登用しやすくする仕組みづくりや、教育委員会を地方自治体に必ず置かなければならない規定の見直しなど、積年の課題がほとんど進んでいない。
 日弁連は合格者を減らす入り口規制で質向上をめざすと主張しているが、これはおかしい。司法試験の合格者増をテコに、多くの弁護士が切磋琢磨を重ね、質の低いサービスしかできない弁護士は淘汰される仕組みが利用者本位につながる。
 労働分野は、正社員の解雇規制の緩和が課題だ。これは正社員と非正規社員との間に横たわる「身分格差」を和らげることにもつながる。また政府が国会に出している製造業派遣などを原則禁止するための法改正案は取り下げるのが望ましい。
 規制改革会議が改革すべき規制を指摘しただけで、法令や通達の改正には至らなかった事例が少なからずある。ここ数年、歴代首相が頼りなかったからだ。首相の支えが弱いとみると、監督官庁は改革の実行を先送りする傾向がある。この傾向は小泉政権後に顕著になった。
 首相は就任直後に「10分千円」が売り物のチェーン理美容店で散髪する姿がテレビに映し出された。この店は洗髪台がない。切った毛はエアーウォッシャーと呼ぶ装置で吸い取り、コストと時間を節約する。
 これを見た既存の理美容業者の一部が、洗髪台の設置を義務づける条例の制定などを求めて水面下で地方議会議員や国会議員への働きかけを強めている。衛生問題をお題目にして創意工夫を怠り、規制に安住しようとする典型であろう。



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