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 進むべき方向ははっきりしている。首相が強調する「経済成長と財政再建の両立」が基本針路になる。課題は具体的にどう前へ進めるかである。
 歳出の半分近くを国債で賄う現状を考えれば、歳出削減や成長だけで財政を健全化するのは不可能。国債が国内のおカネだけでほとんど消化できた時代は数年以内に終わりを告げる。財政再建をこれ以上先送りすれば、国債利回りが急上昇する事態が遠くない将来に現実になりかねない。
 もちろん歳出の無駄は徹底的に削る必要がある。高齢化で膨らむ年金や医療制度についても持続可能な仕組みに見直していかなければならない。
 一方、財政の帳尻合わせだけ考えて、成長をないがしろにするのは本末転倒だ。成長が伸びなければ税収は増えず、財政も好転しない。
 日本への投資を促し、企業活力を高めるには世界で突出して高い法人税率の引き下げは不可欠。
 世界の活力を取りこむ経済連携協定の推進。医療・介護分野などへの参入を促すような規制改革。地方への権限移譲。成長の下支えにつながるこうした政策を、既得権益の壁を越えて前進させられるかどうか。それが野田政権の本気度を測る試金石になるだろう。
 この政権で改革が先送りされれば、経済再生のチャンスは消え去り、本物の危機が到来しかねない。
 野田首相は理想を実現するための突破口を、改革の断行によって切り開いてほしい。



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 鳩山政権の副財務相に来てもらったのは、野田さんが経済の中の財政のあり方に見識を持っていたからです。私の考えを随分よく理解してくれた。
 経済の中の財政のあり方とは四十数年の問題なんです。GNPで英国、フランス、ドイツを追い抜くと、次に出てきたのは一人一人の幸せに焦点を当てるべきだという議論でした。世論に応えるため、児童手当や労働医療の無料化などをどんどんやった。他方で高齢化が進んで、社会保障の経費がかさんできた。経済成長の再現でこれを是正しようとしたが、高度成長の時代は終わったんです。いまだに成長をすれば増税はいらないと主張する人はもっとそこを勉強してほしい。
 一般財政の穴埋めに間接税をあてたことが間違っていたと思います。そこで私たちは、野党時代から社会保障のための完全な目的税を考えてきた。
 国債市場が安定しているのは基本的に1500兆円の個人貯蓄があるからです。いずれこれが減っていくことを考えれば、財政健全化を今やらなければならないということです。
 また代表選の決選投票では38票の差がついたのだから、海江田万里さん(前経済産業相)の「増税反対」は駄目だということです。



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 先進国最悪の財政赤字を抱える日本の財政再建は待ったなしである。
 国民の理解を得て、歳出カットや消費税増税などを着実に進めねばならない。野田首相は不退転の決意で臨んでもらいたい。
 首相は、民主党代表選に出馬した5人の候補のうち唯一、東日本大震災の復興財源を確保するため、臨時増税の必要性を訴えた。財政規律を重視する姿勢は現実的で評価できる。
 首相の姿勢は、代表選で復興増税に反対し、対立した海江田万里・前経済産業相と馬淵澄夫・下国土交通相を、新内閣に入閣させなかったことにも表れている。
 日本の財政悪化に対する市場の目は厳しい。赤字国債頼みの放漫財政から脱却を急ぐべきである。
 財政の基本は収入に応じて支出せよということである。
 第3次補正予算案ではまず、被災地の復興に重要な事業を精査する。そのうえで、復興債を発行し、償還財源を増税で賄うことは有力な選択肢だろう。
 菅政権では、所得税や法人税の増税案が浮上したが、景気への悪影響を抑えつつ、安定財源を確保することが肝要だ。広く負担を求めるには、消費税率引き上げを中心に検討すべきだ。
 財政再建が景気の足を引っ張る事態を防ぎ、財政再建と成長を両立させねばならない。
 中長期的には、社会保障と税の一体改革が重要課題となる。
 新政権は、震災復興の財源確保策とともに、消費税率の引き上げに向けた、具体的な道筋を早急に示してほしい。与野党協議で合意することを求めたい。
 その前提として、民主、自民、公明3党合意に基づき、マニフェストのばらまき政策を見直し、徹底的に歳出を削るのは当然である。



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理解できないのは、被災者は助けるべきだが、税負担はいやだ。他の財源を回すか国債発行で賄うべし、という主張である。
他の財源を回すべきだという主張は、それによって補助金や所得、サービスを得ていた人が震災負担をすべきだということだ。困っている人を見て自分は負担せず、他人に対しては助けてあげなさい、ということである。
国債の場合、具体的な期限を示した将来の増税を担保にしているなら増税と同じだ。だが、増税時期も金額も決めなければ、一時的に負担に目をつぶろうとしているにすぎない。
本紙の世論調査でも、復興増税に6割が賛成している。政治家より世論の方が置かれた状況がわかっている。
税金ではなく義援金ならよいという人も多い。しかし、義援金の本質は自分の裁量内でする支出にすぎない。被害を分かち合うなら、払う方の裁量ではなく被害に見合う負担を受け入れるべきだ。
復興税の是非を議論するなら、最低限、運命共同体か自己責任かでやるべきだ。増税は反対だが国は助けるべしでは論争にはならない。

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民主党代表選の立候補予定者からは「景気に悪影響を与える」などとして、増税の先送り論が目立つ。こうした懸念への配慮は欠かせないが、先送りによる弊害の大きさを認識しなければならない。
今後、被災地では復興事業が本格化する。今秋に成立する予定の第3次補正予算がテコとなり、来年度からある程度の経済成長が見込まれる。そのタイミングを逃さずに増税を実施することが、財政的にも景気への影響面でも望ましい。もちろん、世界経済がリーマン・ショックの再来のような混乱に陥った場合は延期すればよい。
規制緩和や経済連携協定で日本経済自体を大きくする。政策のムダを徹底して洗い直す。これらの取り組みで増税幅をできるだけ抑えることは当然だ。ただ、それで増税を避ける余裕は、日本の財政にはない。

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