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 野田佳彦首相は「攻め」の姿勢が問われている。
 日本の戦後の経済発展は「貿易自由化」で実現した。今回がその例外であるわけがない。しかし、自由化の目標が非常に高いため、「日本農業が壊滅する」などという恐怖宣伝が浸透し、民主党も自民党も参加をためらっている。木を見て森を見ない議論である。
 逆に問いたいが、TPPに参加しなければ日本農業は再生するのか。農業生産は増加するのか。農家の手取りは増えるのか。そんな展望はどこにもない。
 TPPに参加しなければ、企業は海外移転をやめ空洞化の動きに歯止めがかかり、製造業の国内雇用は増加に転じるのか。ライバルの韓国や中国の企業に競り勝てるのか。話はまったく逆であろう。
 日本が自由貿易協定のネット作りに立ち遅れたため、日本企業は海外市場で不利な競争を強いられつつある。アジア諸国とくらべ法人税も高い。円高も進む。これらがあいまって大企業だけでなく中小企業も海外移転を進めつつある。
 中国や韓国、東南アジア諸国は優遇税制や補助金を整備し、世界シェアの高い日本の部品・素材企業を誘致しつつある。日本製造業の宝物というべき企業群である。応じるところも増えている。日本市場の魅力を高めなければ、空洞化は進展する一方だろう。法人税を下げ、TPPに加わって、日本を自由で活力のある市場にしなければならない。
 TPP交渉は難航しており、11月のハワイ会合での基本合意は難しそうだ。しかし、それを理由に交渉参加を先送りするようなことがあってはならない。それは「手堅さ」ではなく「無気力」である。
 農業の自由化は確かに高度なものを要求される。しかし、明日からというわけではない。発効から10年あるいはそれ以上先のことであり対処の時間はある。自由化の例外品目も交渉次第で設定できるだろう。
 TPPはコメの輸出を展望できるほどの強い日本農業にするチャンスなのである。戸別所得補償制度の充実などで混乱を避けつつ農業も「攻め」に転じるのは可能なはずだ。



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 自治体が策定中の復興計画をみると、住宅や学校、病院などを高台に移す案が目立つ。同じ悲劇を再び繰り返さないためにも当然だ。人口が減り、高齢化が著しい地域だ。住民の合意を前提に、ある程度の暴落の集約はやむを得ないだろう。
 集団移転を促す政府の補助制度では国が実質的に9割強の経費を負担する。それでも市町村には重荷だ。政府が制度を拡充しないと高台移転は絵に描いたもちに終わるだろう。
 移転できる高台がない地域では堤防や盛り土構造の道路などを組み合わせて「逃げられる街」を目指す必要がある。
 岩手、宮城、福島3県では事業所の再開や復興工事で求人は徐々に増えてきたが、雇用の受け皿は大幅に足りないのが実情だ。
 政府は2011年度第3次補正予算で被災者を雇用する企業への資金の助成を拡充する。しかし既存の企業の採用を増やす対策だけでは雇用を拡大するうえで限界がある。
 農業、医療・看護・介護、環境・エネルギーなど成長分野を中心に、被災地域への企業進出や起業を促し、就業先を広げる必要がある。国や自治体は産業振興と雇用創出を一体で進めるべきだ。
 重要なのは規制緩和だ。現在、企業は農地を直接は買えず、農家と設立した農業生産法人を通じて購入する必要がある。その場合も生産法人への出資比率は50%未満に抑えられている。農地の集約も進めやすくし、農業経営の収益性を高めないと、企業の参入は増えない。
 水産業も漁業法などが壁になるなら見直せばいい。漁業者と企業が共同で会社を設けるなど、漁業経営の選択肢が増えれば地域の再生が進みやすくなる。
 自治体のなかには、再生可能エネルギーの導入や医療・医薬関係の企業誘致などで特区の指定を求める地域も多い。しかし、政府の復興特区法案の提出は遅れている。各地域が資源を生かして魅力を競い合う土台を一刻も早くつくりたい。
 被災企業の「二重ローン」対策も急がねばならない。政府は中小企業向けの債権を金融機関から買い取る公的機関を被災各県に設ける。しかし、買い取り価格をめぐる関係者の対立が解けず、公的機関の設立協議が行き詰まっているという。
 被災企業の立て直しには金融面での支援が不可欠だ。再建の見込みがある企業については震災前から抱える債務を減免し、新たな資金を借りやすくしてほしい。



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ポストイット オンラインプリント i-Note

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 日本経済が成長するには、貿易自由化なとで「国を開く」ことが欠かせない。野田首相には、TPPの交渉の席に早く着くというメッセージを発信してもらいたい。
 TPPに参加すると、今までなかった海外商品が日本の店に並び、日本からは高級フルーツなどの輸出が期待できる。しかし、参加しなければ、国際分業が進む中で日本は取り残されていく。参加国によるルールづくりに早くから加わり、議論をリードすることに意味がある。
 戸別所得補償制度は、本来は強い専業農家を育てるためで、貿易自由化とパッケージだったのではないか。TPPの参加に当たっては、コメをどう守るかが最大の課題だが、交渉参加を表明した上で議論すればいい。
 震災からの復興を図るには、規制改革を進め、政府がもつ遊休資産や株式を放出して、非常事態であることを示してもらいたい。



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 経済連携の実現も必要だ。日EU、日韓、日豪などさまざまな2国間連携を推進する一つとして、TPPも検討する。
 円高対策には総合特区など規制・制度改革を含むあらゆる手段で取り組む。



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 国内経済の空洞化が懸念されている。企業活動が海外に移るとその分、国内の所得創出・雇用機会が失われてしまうという議論である。その気持ちはよく分かる。しかし、次のようなプラス面を考えてみてはどうか。
 第1は、企業活動のグローバル化である。空洞化が心配だからといって国内企業のグローバル化を止めることは、日本企業の成長可能性に枠をはめることになる。
 日本企業の海外進出を抑え込もうとするよりは、海外企業の日本進出を促進すべきではないか。そうすれば、グローバル化の流れを促進しつつ、国内経済の空洞化を防ぐことができる。
 第2に、ある程度の空洞化は必要である。今後の長期的な日本経済の先行きを考えると、一方では労働力が足りなくなり、他方では、医療・介護・福祉などの新たな需要が出てくる。すると、ある程度は活動拠点を海外に移し、それによって浮いた分を新しく伸びてくる分野に振り向けなければならなくなる。
 第3は、制度間競争を活発化させることだ。そのためには企業が活動しやすい制度的環境の整備が必要だ。税制、金融規制、各種参入規制などがそれである。
 もちろん日本もそうした制度間競争の渦中にある。結果的に、企業が活力を発揮しやすい環境整備につながるだろう。出て行こうとする企業を、出ていかないよう説得するのではなく、企業が進んで国内にとどまるような環境整備を図るべきである。
 海外投資を呼び込み、国内の資源の流動性を高め、制度間競争に応えていけば、空洞化の脅威を経済の活性化に結び付けていくことができるのではないか。



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